長年愛用してきたLogicoolのMX Master。高性能で手に馴染む最高の相棒でしたが、残念ながら側面の樹脂パーツが経年劣化でベタつき始めました。
そろそろ買い替え時か…と考えたとき、以前から気になっていたデバイスが頭に浮かびました。そう、トラックボールです。
中でも評判の高い「MX Ergo」なら、MX Masterユーザーの自分にも合うかもしれない。「腕が疲れにくい」という噂も魅力的でした。
期待を胸に、私はMX Ergoの世界へ足を踏み入れることにしたのです。

初めてのトラックボール:MX Ergoとの格闘
意気揚々とMX Ergoをセットアップし、使い始めましたが…正直、最初はかなり戸惑いました。マウスを動かすのではなく、親指でボールを転がしてカーソルを操作する。
頭では理解していても、長年染み付いたマウス操作の感覚が抜けません。
操作感:慣れが必要な独特の動き
狙った場所にカーソルをピタッと合わせるのが難しく、クリックするつもりが意図せずドラッグになってしまったり。
ウェブサイトの細かいリンクをクリックするのも一苦労。明らかに作業スピードが落ちているのを感じました。「これは慣れの問題だ」と自分に言い聞かせ、しばらく使い続けてみましたが、スムーズに操作できる感覚を得るまでには、思った以上の時間が必要でした。
疲労感:期待したほどの効果は…?
トラックボールの大きなメリットとして「腕や手首が疲れにくい」という点がよく挙げられます。
MX Ergoもその点を期待して導入したのですが、個人的にはMX Masterを使っていた時と比べて、疲労感に劇的な差は感じられませんでした。
確かに、マウス本体を動かす必要がないので、腕全体の動きは減ります。しかし、MX Master自体が非常に優れたエルゴノミクスデザインを採用しており、元々手首への負担は少ないマウスでした。
そのため、私の場合は「トラックボールだから圧倒的に楽!」というほどの感動は得られなかった、というのが正直な感想です。
機能比較:MX Masterの完成度を再認識
操作に慣れてくるにつれて、今度は機能面での違いが気になり始めました。
特に、MX Masterがいかに多機能で、自分の作業スタイルに最適化されていたかを痛感させられたのです。
スクロールホイール:やっぱりMX Masterが好き
MX Masterの「MagSpeed電磁気スクロール」は、本当に秀逸です。
長いページを一気にスクロールする時の滑らかさとスピード、そして精密な作業をしたい時のカリカリとしたクリック感。
この切り替えがシームレスに行えるのは、大きなアドバンテージでした。MX Ergoのスクロールホイールも決して悪くはないのですが、一度MagSpeedの快適さを知ってしまうと、どうしても物足りなさを感じてしまいます。
ジェスチャーボタンがない!
地味ながら私がMX Masterで多用していたのが、親指部分にあるジェスチャーボタンです。
ボタンを押しながらマウスを上下左右に動かすことで、仮想デスクトップの切り替えやウィンドウの整列などを素早く行えました。これがMX Ergoには搭載されていません。
カスタマイズで他のボタンに割り当てることも考えましたが、あの直感的な操作感は再現できませんでした。
サイドスクロール(水平スクロール)の不在
Excelや動画編集ソフトなど、横に長い画面を扱う際に非常に便利だったのが、MX Masterのサイドスクロールホイールです。
これもMX Ergoにはありません。
ボールを傾けることで水平スクロールができる機能はありますが、ホイールでの直感的な操作に慣れていたため、これもストレスに感じる一因となりました。
結論:多機能マウスからの移行は難しい?
MX Ergoは、省スペースで使え、腕を大きく動かさずに操作できるという点で、優れたデバイスであることは間違いありません。
特定の作業環境や、腕の疲れに悩むユーザーにとっては、最適な選択肢となり得るでしょう。
しかし、私のように長年MX Masterを使いこなし、その多機能性をフル活用してきたユーザーにとっては、MX Ergoの機能ではカバーしきれない部分がありました。
スクロールの快適性、ジェスチャーボタンによる効率化、サイドスクロールの利便性…これらは、日々のPC作業において、私が思っていた以上に重要な要素だったのです。
結局、トラックボールの操作に完全に慣れる前に、機能面での「物足りなさ」が勝ってしまい、私は再びMX Master(あるいはその後継機)の世界に戻ることを決めました。
まとめ
愛用していたMX Masterの樹脂劣化をきっかけに、評判の良いトラックボールMX Ergoを試してみました。
腕の疲労軽減効果は期待したほどではなかったものの、それ以上にMX Masterの多機能性(特にスクロールホイール、ジェスチャーボタン、サイドスクロール)に慣れ親しんでいたため、MX Ergoでは作業効率の面で物足りなさを感じてしまいました。
結果として、トラックボールへの完全移行は断念し、再び高機能マウスであるMX Masterシリーズを選ぶことにしました。
マウスとトラックボール、どちらが良いかは個人の好みや作業内容、重視するポイントによって大きく異なります。
今回の私の体験が、デバイス選びで迷っている方の参考になれば幸いです。